これが運命だって思った。これが、運命の相手だと思った。だけど、、今のこの苦しい時間は<宿命>だった・・・。

私には交際して2年になる恋人がいた。彼は多趣味で、私の事なんていつも二の次。
本当は寂しい夜に迎えに来て欲しい。本当は、愛しい想いを伝えたい。
でも、彼の趣味に私は着いて行く気になれず、ただ彼の帰りを待っていた。
これだけ趣味が多いから、彼は<結婚>なんて、とても考えられる状況じゃない。
私も彼も、結婚するには早くない年だったから、両親にも会ってるだけあって、結婚を匂わせてくれたって良いのに。。

そんなある日、私はバレーサークルに入った。
そこで出会った彼「雅也」は私の4つ下の好青年。印象も悪くないし、少し心に残る程度の人。
だって・・・私には2年も付き合っている恋人がいるわけだから・・・。
今から恋愛をする元気もなかった。今の恋人と結婚を考えないわけないから、、。
私は趣味は多くないけれど、スノーボードをする。今年の冬は、バレーサークルのボードツアーに参加した。
勿論・・・少し気になる彼も。。その時、、、私の運命が変わった瞬間だった。
「実は、ずっと好きでした」 彼からの突然の告白。
人に愛されているぬくもりと、人に想われているくすぐったさを思いだした。
「私には・・恋人がいるの」 とにかく諦めて欲しかった。私が彼に惹かれるのが解ったから。
今の彼との結婚を自分だけ夢見ている・・。それでも、、今の恋人を待っていたい自分がいた。
きっと・・・2年と言う時間が、私をそうさせていたのかもしれない。
「それでも、俺はゆうこさんを愛しています」

どうしたら良いの?彼の言葉一つ一つが私の心の奥底に光を入れてくれている。
急速に光が差しこんで来るのが解った。その光がまぶしすぎるくらいに・・・。
自分の口が勝手に動き出した・・・ううん、心が私の口を動かし始めたのかもしれない。
今の恋人との事も、近い未来への結婚に対する気持ちも、彼に惹かれている今の事も・・・。心が全てを流し始めた。
「それでも、一生・・・大切に出来る自信が俺にはありますから」
その瞬間、絡まっていた糸がスルスルと解け始めた。
「返事は・・全てが終わってからします」今はそれしか言えなかった。
彼の心が真っ直ぐだから、私もこんな状態ではダメだと思う気持ちからストップをかけていた。。
それからすぐ、今付き合っていた彼とは別れた。
恋人の彼は、少ない口数ながらも、私のことを愛してくれた気持ちも伝えてくれた。
きっとね、、これがもっと昔なら別れも取消してしまうくらいに抱き締めていた。
でも、、今は先にある・・・光がある未来に歩いていきたかった。前の見えない暗闇を歩く怖さが嫌いだった。

私と雅也の恋愛がスタートした。

幸せな関係がこのまま永遠に続くと思っていた。。
しかし、その幸せ闇が入ってきたのは、昔のしがらみによるものだった・・・。
ある日、私の姉が同和地区の人と結婚をした。今でもある・・差別の壁。。
私も雅也も、特別問題としている事ではなかった。
言ってしまえば、関係のない話しだったのだ。自分達の愛に差別問題は何の支障もないと思っていた。
雅也は長男で、自営業をしている実家なので、後継ぎとして将来が決まっていた。
雅也が両親にこの事を話した時に言われた言葉は・・・今でも忘れられない。
「結婚と恋愛は別の方が彼女もおまえも幸せになれる」
関係ないと思っていたのは、二人の間だけだった。雅也の両親や、親戚・・・。
今は<同和問題>と言う差別が薄れつつあるが、なくなったわけではないのだ。
結婚は二人だけの問題ではないと言うのは、この歳になれば十分承知だった。
雅也と幸せになるには、二人の周りの人も幸せになってほしい。私は、、ずっとそう思ってきた。

二人でたくさん悩んだ。愛していたけれど、愛するがゆえに別れる事も考えた。
「ずっと付き合って結婚できる時がきて、親の反対で結婚できないのなら今別れた方がいい」
そう私が言い続けていたけれど、彼は「二人で幸せになれるように頑張っていこう」そう言ってくれていた。
不安で押しつぶされそうになっていた二人だった。でも、二人で涙を流しながらも差さえあっていた。
それだけで、、良かった・・・。

結婚と言う言葉にとらわれていた私が、彼の傍にいられると言う喜びと身体いっぱいに感じていた。。
それで良かった、、今はそれだけで不安が消えていくのを感じていた。

春になり、雅也は県外で就職する事になり遠距離恋愛がスタートした。
正直言って不安だった。怖かった。姉の事が・・・頭から離れなかった。
でも、彼の言葉に、、彼自身に私の全てをあずけていた。。
「ちょっとはなれるけどこれからも頑張っていこうね」
その言葉だけが、私の心の支えになっていた。
遠距離になった不安を優しく解いてくれるかのように、優しい言葉で私を包んでくれた。
将来を考えないようにはしていたけれど、彼の将来を考えてくれる言葉が
わたしの姉の結婚の不安を溶かして行ってくれていた。

遠距離恋愛を初めて9日目。
「姉の結婚があった時からずっと悩んでいた。二人で暮らしていた時は本当に別れる事なんてできないし、
一緒になりたいから頑張って行こうと思っていた。でも遠距離になって、一人になってゆうこの事を考える時間ができて、
今の俺は将来自分の家業を継ぐために仕事を覚えて一人前にならないといけない…
それまでゆうこを待たせる事を考えたら一人で悩みながら付き合っていく事が苦しかったし、
それから結婚できないかもしれないと言う問題になった時、その時では遅いと思った」

突然のサヨナラの宣告。
今まで、二人で悩んできた事だった。
二人で涙を流して、それでも頑張っていこうと誓い合った・・・あの夜はなんだったの。
距離が離れた時の不安が・・・的中してしまった。
自分の考え過ぎだと思い、いつも彼には前向きな自分でいた。私がそうありたかったから。
しかし・・彼にとってみれば、私の前向きに向き合っている事が苦しくてたまらなかったのだろう。
一人になって、ゆっくり考える時間を作った時に・・、彼の中の取れない糸がゆっくり解けたのだろう。

電話で全てを終わらせる事をしたくなかった私は、次の日彼の元ヘ行った。
そして、二人の思いを全て話し合った。
離れたくなかった。失いたくなかった。おばあちゃんになっても隣は雅也だと思っていた。
でも、、今は言うべきじゃない。愛しているからこそ・・気持ちだけを伝えて、そっと身を引く事を決意した。
「あなたと幸せになりたかった・・・」
その一言で、彼に全てが伝わったのだろう。
彼も「二人が幸せになる為に、今俺が決断しないといけなかった。」と、、。
そして、二人で抱きしめあい、涙がかれるまで泣き続けた。最後の夜だった・・・。

それから、月日が経った今でも、同じ事で愛する人を失うのが怖くて恋が出来ないでいる。
少しだけ・・・時間に身を任せて自分が自分に向き合う時間を楽しむ事にしよう。

彼は、、運命のだった。今でもそう思っている。
でも・・離れるのは宿命だった。。
昔の争いが・・・今の私達の愛も引き裂くなんて・・・。
もう、同じ苦しみで同じ涙は・・ごめんだよ。。

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